ホハレ峠からの道はしっかりと作られている。
旧門入。まだ生活をしている人たちがいる。
西谷左岸の林道はきれいで現役の林道と言っても差し支えない程。
西谷へ下りる。水の感触が心地よい。
大ヤブレ近くのブナの森はやはりすばらしい。
大ヤブレ付近は絶好のテン泊地。
大ヤブレから続く樹林帯の中を進む。
最初の滝はなんとか全員フリーで上がる。
昨年は右岸を巻いた滝を直登。
意外と難しい滝が多い。
もうそろそろ滝も終盤。両手両足を突っ張って登る。
上流のブナは太くて大きいものが多い。
三周ケ岳は貸し切り状態。
夜叉ケ池では何やら作っていた。
徳山ダムができて以来門入を起点とした千回沢山、不動山などの山行は遠いものとなったことは7月末に不動山に登った時にも書いた。今回の金ケ丸谷遡行もそんな遠くなった山行の一つだ。しかし、幸いな事に現在ホハレ峠から門入に向けて山道が作られている。不動山に行ったときに利用させてもらった道だ。この道のおかげでなんとか僕らでも門入に入る事ができる。作られた方々には感謝、感謝だ。
8月21日(土)
今回は門入から金ケ丸谷に入ってそのまま三周に登り夜叉ケ池を経て夜叉ケ池駐車場に下る計画だ。まずは下山予定地の夜叉ケ池駐車場に車を二台デポしてホハレ峠に向かう。峠で共同装備を分け合って準備完了。まだ記憶に新しい山道を下っていく。
3度程徒渉して林道跡に出ると門入まではわずか。ダム湖によって隔絶されたとはいえ何軒かの家があり生活の気配がする。その中の一軒にEさんが挨拶に訪れた。聞けば昨年不動山へ登った際にお世話になったとの事だ。ここの奥さんが気さくな方で表まで出てこられて話をしていった。雪が降るまではここにいるのだそうだ。電気も電話もテレビもあり生活には困らないらしい。
不動山の時に歩いた入谷の林道を右に分けて橋を渡り西谷左岸の林道を歩いていく。荒れているのかと思ったが意外としっかりしている。ところどころ土砂の流れているところがあるが途中までは今でも車で走れそうだ。
盆が終わったとはいえ樹間から射す日差しはまだ熱い。時折沢の水でのどを潤しながら長い林道をひたすら歩いていく。途中、草刈りをしている地元の方に会った。茸採りか山菜採りの為に道を整えているらしい。この方によれば昔は青年団の団長になる為には金ケ丸谷から夜叉ケ池まで行かなければならなかったとの事。意外とハードルが高い。我々にその資格があるや否や。もっとももし資格があったとしても肝心の青年団が今や存在しないのだが。
林道終点が近くなると樹林が濃くなる。この辺りにテープの目印があり谷に向かって踏み跡がつけられていた。これを辿っていくとコンドウ谷出合付近に降りた。昨年、山日和さん、とっちゃんとコンドウ谷~金ケ丸谷遡行をやった時の泊地の近くだ。その泊地は昨年チェルトを張ったところがそのまま残されていた。
いよいよ沢歩きの始まりだ。好天で気温が高くはやく水に触れたいと思っていたがここからは思う存分水と親しめる。水の感触が気持ちいい。泳ぎたいくらいだったが流石にそれは我慢した。
沢はこれといって難しいところはない。時折股辺りまで水につかりながらの遡行は気持ちがいい。昨年は対岸を巻いて見過ごしてしまった励谷の出合を過ぎて小ヤブレ、大ヤブレの出合に向かう。両岸を覆う樹林がすばらしく見上げてはため息をつく。特に小ヤブレの出合辺りからは両岸がブナで覆い尽くされそのすばらしさは筆舌に尽くしがたい。何度見てもこの感動は変わらないだろう。
大ヤブレの出合辺りは開けた樹林帯でテン泊地に適している。どこでもテントが張れる感じだが出合より少し先に行ったところに最適なところをSさんが見つけてきてそこに二張り設営。ブナの森に囲まれた素敵なところだった。
しばらく自由時間を過ごした後焚火の傍らで宴会モード。大自然の中での歓談は時を忘れさせてくれた。
8月22日(日)
早朝4時に起きテントを撤収し6時に出発。しばらくは両岸にブナを主体とした穏やかな樹林帯が続く。それらが朝陽を浴びて輝く様は何とも言えない。やがて沢が狭くなってくると美濃俣丸への直登沢に出合う。「28年前にこの沢から美濃俣丸へ登ったんや」とNさんが懐かしそうな目をしていた。今回、このNさんをはじめ錚々たるメンバーがそろった。この中で一番年齢の若い自分がこの先の滝場で置いていかれるのではないかと心配でしょうがない。
出合を過ぎてすぐに最初の滝が現れた。4mほどの斜瀑でSさんが先頭で滝の右側をよじ登っていき後続が続く。その奥の淵は昨年と同じく流木が橋の様になっていてそれを使ってこえる。と今度は5mほどのチョックストーン。昨年はここの直登はきついと右岸の滝を登って巻いていった。ここを関ヶ原Nさんがトップで滝の左側から登っていく。それを見て全員これに続いた。意外と手がかり足がかりがあり思ったより登りやすかった。関ヶ原Nさんは右岸の滝の方がきつそうに見えたと言っていた。
その後も滝はいくつか現れた。何れも2~3m前後の滝で大きなものはないが深い青々とした淵を持っているのが印象的だ。中には登るのに手こずるものもありそこはリーダーのSさんがトップで登り方を示してくれた。
終盤の樋状の滝は両手足を突っ張って登っていくという印象的な滝だ。ここを登ると更に淵の深い滝がある。ここは直接越える事ができず右岸を巻く。この滝を最後に滝らしい滝はなくなった。そのかわり次第に沢が広くなって両岸の山腹に再びブナの森が現れる。この辺りのブナは大ヤブレ辺りよりも大きく育っておりより野趣豊かで原始林という感じがする。それらに目を奪われつつ細くなった沢を詰めて登山道を目指す。
源頭部辺りに至ると沢の分岐が多くなりその選択が難しくなるのはどの沢に行っても同じ。思ったところへ100点で到達することはなかなか難しい。GPSも使って三周ケ岳西側の最低鞍部を目指したがわずかの差で逃した。出合った登山道はすでに上り勾配になっているところだった。
登山道を東に進んで三周ケ岳山頂に向かう。山腹のヤブは稜線近くに至ってもそれほど濃くはなかったが登山道を覆うヤブはなかなか大変だった。
山頂には好天にも関わらず登山者はいなかった。山頂広場は昨年来た時よりも囲む灌木が鬱蒼としており圧迫感がある。登山道も含めて今まで訪れた三周ケ岳で今日が一番ヤブが濃かった気がする。
三周ケ岳は初めてだというTさんの音頭で万歳三唱。初めての三周ケ岳が金ケ丸谷からとは羨ましい限りだ。
下山は夜叉ケ池経由で車のデポしてある夜叉ケ池駐車場に降りた。こちらも登山客は思ったより少なかった。こんな暑い日にはこんなところへわざわざ汗をかきにこないという事だろうか。そんな中でも夏休みを利用してきているらしい子ども達の団体が登山道を元気よく駆け下りていくのが印象的だった。