前日の雨のせいか、石徹白川は濁流となっていた。
この季節にしては雪割れがひどい。正面ルンゼに雪崩の跡も見られる。
締まった雪の中を沢が音を立てて流れていた。
推高谷の渡渉地点。雪割れが見られるがまだ十分歩ける。
急な尾根をあがると薙刀平の端に出る。まだ山頂までは遠い。
薙刀平はブナ林が広がりどこで休憩してもくつろげそうだ。
山頂直下の大斜面。上部に雪割れが大きな口を開いている。
薙刀山山頂は360°の展望。南の野伏ケ岳の姿が美しい。
休憩もわずかで日岸山へ向かう。このピークの西側の地形は荒々しく恐ろしげだ。
北に見える願教時山。この山も西側が崩壊している。
振り返れば薙刀山。山頂には何人かの人影が見えた。
日岸山の南斜面は無木立に近くいい感じの斜面。気持ちよく滑れた。
鞍部には日岸山に登る準備をするグループ。
薙刀山の北斜面は中斜面でゲレンデのようだ。
和田山牧場跡に戻るとスノーモービルを上げでいるグループがいた。
土曜の昼過ぎから前泊予定でゆっくりと下道で奥美濃に向かう。
季節を間違えたかのような陽気。
ひょっとして道沿いに桜でも咲いているのではと疑いたくなる。
この陽気に雪の方が心配だが石徹白なら何とかなるだろう。
そんな思いで向かったが実際に雪を見るまでは心配だった。
白鳥に入ると雪割れが目立つものの大日ケ岳などにそれなりの雪が認められホッとする。
しかし桧峠は先月訪れた時とは比較にならないほど雪が少ない。
下見をかねて白山中居神社の下の石徹白川まで行ってみた。
先日の雨のせいか激しい濁流となっていた。
2月の河川とは思えない。
ウィングヒルズ白鳥に戻って、満天の湯の駐車場で前泊。
陽のある内にみたゲレンデは雪が少なく地肌が見えていた。
夕食後満天の湯に入った。
入浴料がちょっと高いのが不満だったが露天風呂は星空が見えていい気分だった。
翌日の好天が期待できそうだ。
まだ陽の明けぬ内に石徹白川まで移動。
右岸の広場に車を停めヘッドランプを頼りに準備。
暗い中を出発した。
雪は林道の橋手前まで残っていた。
しばらく板を担ぐ事になるかもしれないと思っていたが大丈夫そうだ。
この分だと上部の積雪もちょっと期待できるかもしれない。
林道に残る雪は残されたトレースのままガリガリになっている。
このままでは滑るのに苦労するだろう。
下山する頃には緩んでいてほしいものだ。
下部で若干雪切れするところがあり2回ほど板を外した。
しかしそれ以外は板を履いたまま歩けた。
林道のショートカットもいつも通りだ。
一時間ちょっとで和田山牧場跡に着く。
ここに来ると何時もその風景に圧倒される。
しかし今日はちょっと様子が違う。
正面に見える野伏ケ岳の雪割れがひどい。
そして正面ルンゼには雪崩の跡…。
まだ2月というのにこの姿。
和田山牧場跡を取り巻くその他の峰々も似たり寄ったり。
何時もここに立つとワクワクするのに今日は寂しい。
薙刀山を見ればそこにも山頂直下に大きな雪割れが口を開けている。
なんだかテンションが下がり気味だがともあれ薙刀山に向かう。
まだ雪の残る湿地帯を越え野伏ケ岳の林道に取り付く。
林道を進んで推高谷右岸に至る。
そこから左岸側の上部を見ると支沢にいくつか滝ができている。
結構な水量が落ちているようだ。
まだ2月ですよ…。
林道終点からは推高谷の渡渉となる。
適当に下りやすそうなところを探して谷底に下りる。
帰りはここがスキーのトレースで一杯になっていた。
谷底は一部雪割れしているもののまだなんとか歩けるだけの雪に埋まっている。
谷に沿って少し登ったところで対岸の尾根に取り付く。
この尾根は前回も利用した尾根だ。
その時は急斜面に結構苦労した記憶がある。
今回も取り付いてみると記憶通り結構な急斜面。
それに固い雪面でスキーがズレそうな感じ。
クトーを付けた方が楽だなあと思いながらなんとかシールだけで頑張った。
ふと振り返り谷の方を見るとスキーヤーが一人渡渉点に着いたところだった。
どれくらい後から登られたのかわからないがそれまで気配を感じなかった事を考えると随分早足の方のようだ。
その内追い越されるかもしれない。
尾根の傾斜が緩くなると薙刀平の渕に出る。
思ったより早く尾根を登る事ができた。
しかしここから薙刀山まではまだ距離がある。
以前来た時にはここから稜線側へ進み稜線沿いに山頂に近づいた。
でもそれはなんだかまどろっこしい感じだ。
ここは薙刀山に向かってまっすぐに進んでいく事にする。
薙刀平は素敵なブナ林に覆われている。
どこで休憩しても楽しく過ごせそうだ。
そんな中をアップダウンを繰り返しながら進んでいく。
薙刀山の南側大斜面の下へくると視野一杯に広がる斜面に圧倒される。
しかも無木立だ。
こんなところを雪質のいい時に滑ったらさぞかし気持ちがいい事だろう。
それを証明するかのように幾つかの気持ち良さそうなシュプールが残っている。
斜面の左側、山頂直下は下からも確認できたように雪割れが大きく口を開けている。
右端も雪割れができている。
その間の斜面を登っていくのがとりあえず安全そうだ。
斜面は雪が緩んできていてシールがよく利く。
結構な斜度だが直登できてなんだか気分がいい。
見上げれば視野一杯に白と青のツートーン。
まるで空に向かって昇っていくようだ。
斜度が緩くなって左手に進むと穏やで広々した山頂に。
山頂は360°遮るもののない大パノラマ。
石徹白の峰々はもちろん奥越の山々、乗鞍岳、御嶽山。
遠くの山がややもやって見えるのは黄砂のせいか。
風が若干強いが前回のような強風ではなく気分よく過ごせる。
このまま風景を楽しみながら大休止したくなる。
しかし今日の目標は北に見えるピーク、日岸山だ。
わずかな休憩の後、シールを剥がして薙刀山の北斜面に滑り降りていく。
雪面はアイスバーンとまではいかないが固め。
それでも緩やかな斜面なので難なく降りていける。
途中から左寄りに滑って鞍部に近づいていく。
うまく稜線右斜面に渡りジャストで鞍部に乗る事ができた。
後は稜線沿いに日岸山のピークを目指して登っていく。
結構急斜面だがいい感じに雪が緩み登りやすい。
振り返れば薙刀山のこんもりした山頂。
そこに立つ人影一つ。
先ほど後ろに見えた人だろうか。
ピークが近づいてくると稜線西側に岩の立つ険しい地形が見えてくる。
そこに雪が張り付いて今にも落ちそうだ。
この辺りの地形は県境を挟んで東は穏やで西は険しい。
こうして稜線を歩くとその左右の地形の違いの極端さがよくわかる。
どうしてこのような地形が出来上がったのだろう。
日岸山ピークはこれまた穏やかで広い。
展望も360°だ。
特に北側の願教寺山の顕著なピークが目を惹く。
願教寺南側には雪の付いた急斜面が見える。
そこをヤブコギの面々とキックステップして登った記憶が蘇る。
西側には荒々しい崩壊地が恐ろしげだ。
崩壊地の向こうには樹林の尾根が急激に福井県側に下っている。
あんな尾根を登ろうとした人がいたらしい。
山頂は風がやや強く休憩は鞍部に下りてからと思っていた。
しかしこのすばらしい風景を目の当たりにしてこのまま下りるのももったいない。
で我慢できずビールを取り出して乾杯!
うまい!
南の薙刀山を見ると結構な人数が山頂にたむろしている。
その向こうの野伏ケ岳には人が少ないようだ。
今日はメジャーと言われる野伏ケ岳より薙刀山が大人気だ。
休憩を終えて滑り出そうとしたら薙刀山から下りてくる一団があった。
へたな滑りを見られるのが嫌だなあと思いつつ日岸山南斜面へ滑り出す。
日岸山南斜面は雪がちょうどいい具合に緩んでいた。
斜度も程々で木立も少なく気持ちよく滑れる。
あまりに気持ちよくてあっという間にボトムが近づいてきた。
ボトムに下りてしまうと登り返しが面倒なので途中から鞍部側にトラバース。
そこには先ほど薙刀山から下りてくるのが見えた一団が登りの用意をしていた。
しかし着地点がちょっと離れていて話をする事はできなかった。
稜線を登っていく姿をずっと追っていたがリーダーはかなり腕のある方のようだった。
鞍部近くでランチタイム。
お湯を沸かしてカップ麺で腹ごしらえをした。
薙刀山への登り返しは下りてきた斜面よりも東側を登っていった。
ここは木立が少なく広い中斜面でまるでゲレンデのようだ。
雪質が良ければ楽しい滑りが味わえるだろう。
薙刀山山頂稜線に付いた時携帯が鳴った。
山日和さんからのメールだった。
「どこに登っているの?」
山日和さんは小白山にいるという。
小白山と言えば野伏ケ岳を挟んで向こう側。
同じ山域にいるとはなんとも奇遇だ。
薙刀山からはすぐに滑降開始。
しかし南側大斜面は雪が緩みすぎている上に大勢のシュプールでギタギタ。
思うような滑りができなかった。
薙刀平は稜線に沿って滑っていき最後は登ってきた急尾根を下った。
ところがこの急尾根を滑り降りた跡が他に見当たらない。
どうやら他の方々の多くは野伏ケ岳との鞍部あたりから谷へ下りたらしい。
急尾根はかなり雪が緩んでいて板がズレて滑りにくかった。
それでも割と早く谷までおり後は林道をひたすら和田山牧場跡まで辿った。
牧場跡手前で林道は水平からわずかな登りとなっていてスキーを漕ぐのに一汗。
少し進んでは休んでのくり返しで少しずつ前進。
振り返れば今下りてきた薙刀山が青空のもと輝いている。
和田山牧場跡には2つのグループ。
スノーモービルを囲むグループと山スキーのグループ。
ここでしばらく休憩をとる。
山スキーのグループが下りていった。
その後ちょっと時間をおいてこちらも林道に向かった。
林道はスノーモービルの跡とたくさんのトレース。
しかし適度に緩んでいて滑りやすい。
この林道としては今までで一番滑りやすいかもしれない。
下部に至って所々で雪が切れてきたあたりで先行のグループの最後尾に追いついた。
その人をよく見るとなんとヒロトロさんだった。
ビックリ!
話を聞けば薙刀山に登ってきたとの事。
これまた奇遇である。
下までおりるとkyuさんもいた。
先日、猿ケ馬場にご一緒された方々の顔も。
みなさんいい天気に恵まれいいスキー山行をされたようでどの顔も晴れ晴れとしている。
こちらもなんだかうれしくてニコニコして会話に入ってしまっていた。
更に最後にはこんな落ちが…。
kyuさん達と別れた後隣の車をよく見ると見覚えのあるレガシー。
メールで確かめるとやはり山日和さんだった。
どこにいるのかだいたい知っていながら「どこにいるの?」とメールしてきたのだ。