沢状の斜面を登って木和田尾に取り付く。
稜線上の道はよく踏まれていて生活道路のようだ。
鉄塔広場からは尾根沿いの鉄塔の連なりが見える。迷ったら送電線を辿れば良さそうだ。
白船峠までトラバース。山腹には梅蕙草が鮮やかな緑を見せていた。
冷川岳では強風に混じって白いものも舞っていた。
県境尾根はわずかにガスがかかって幽玄な雰囲気だ。
県境尾根脇の池。霧池という名がついているらしい。
本日の一番の目的、北池。コケがきれいな池だ。
丸尾はピンクの目印が目障りで楽しむことができなかった。残念。
北海道、東北辺りでは大荒れの天気で季節外れの雪も降るという。
こちらの天気予報は曇り。
まさかこの時期、このあたりで雪は降るまいと白瀬峠登山口に向かった。
歩き出しは比較的天気もよくモチも程よくあがっていた。
木和田尾の取り付きから沢状を登り尾根筋に出ると道幅も広くなり穏やかな感じだ。
まるで田舎の生活路のようだ。
「隣の作ベエさんちに上州土産もって遊びに行ってくるだ」
てな雰囲気の道が続く(分かりにくい!)
ほのぼのとした空想とは裏腹に上空では強風で送電線が唸って恐ろしげだ。
これは県境稜線ではかなりの風かも。
木和田尾を歩くのは初めて。
雪のある頃に歩くのがいいのだろうなと思いつつ訪れてない。
できるなら雪のある頃スキーで訪れてみたい。
で今回はそのための下見も兼ての山行だ。
雪があったらどんな感じか想像しつつ歩く。
広々として穏やかでいい感じの尾根だ。
雪があったらもっと更にいい感じなのだろう。
しかし残念な事に登山道の左右の木々にされているピンクのスプレーマークが目について気になる。
坂本谷との出合いから山腹をトラバースして白瀬峠に向かう。
途中、梅恵草の群生が山腹を鮮やかに緑に染めていた。
白瀬峠に出ると思っていた通り強風が吹き付ける。
それも生半可な強さじゃない。
一緒に飛ばされてくる雨粒が顔を打っていたい。
3000m級の山頂で吹く風のようだ。
しかし、先に進む意欲に何ら変わりはない。
今日は調子がいい。
県境尾根を西に向かって進む。
冷川岳を過ぎたあたりで白いものが時折舞うようになった。
ええ〜!雪〜!冬用の装備は何も持ってきてないぞ!
手袋もない!
かじかんできた手をズボンのポケットに突っ込み温めつつ歩く。
転んだら大変だ。
帰り道に利用しようと思っている丸尾の分岐を確認して更に西に進む。
カタクリ峠から先で登山道と別れて更に県境尾根を進む。
雨の時やガスが出ていても御池なら楽しめる。
そう思っている。
特にこの県境尾根沿いは以前に小雨の降る中を訪れその時の印象がいい。
雨に煙る中で苔むした石灰岩やドリーネが幻想的に浮かんでいた。
今日もそれが期待できそうだ。
果して今回も県境尾根はいい感じだった。
いくつかの形のいいドリーネ、石柱群、そして樹木。
いい雰囲気を醸し出している。
尾根沿いに歩いていくと小さな池が現れる。
沼と言ってもいいかもしれない。
池と沼の違いって何だっけ?
カッパがいる方が沼?
ここから県境を離れて南に向かう。
北池は確かこの辺りのはずだったが一度しか来た事がないので自信がない。
ヤブっぽい中を歩いていくと、あった!ありました!
ドンピシャで北池に辿り着いた。
ここが今日の一番の目的地。
前に来た時も確か雨が降っていていい雰囲気だった。
今日もいい雰囲気。
ここは水面に顔を出しているコケがきれいだ。
それと踏み荒らされてない感じもいい。
しばらくじっと水面に見とれる。
水面が池の端からざわめき始め一瞬の後、僕の身体を揺らす。
その瞬間、風が見えた気がした。
しかし今日の風は優しい風ではない。
それに雨も時折強く打つようになった。
長居はできないな。
後ろ髪を引かれる思いがしたが北池を後にした。
登山道にはすぐ出た。
登山道からこんなに近かったのだと驚いた。
もっと奥深いところにあると思っていたのに。
後は登山道を引き返す。
雨脚は強くなったり弱まったり。
時折白いものが混じったり。
こんな天気にも関わらず登山道ではいくつかのパーティに出会った。
みんな元気だね。強いね。
どこかで休憩をとろうかと思ったが風と雨を防げるような適当なところもなく
とにかく下山してしまう事にした。
下山は予定通り丸尾から。
ここもはじめて歩くのでどんなところか期待した。
しかし歩いてがっかり。
べつに丸尾自体が悪いわけではないのだ。
いい雰囲気のやせ尾根で悪くはない。
がっかりさせられたのは木々のピンクのスプレーマーク。
執拗にマークされていて前を見て歩く限り視界から一瞬たりとも消える事がない。
それがずっと続くのだ。
歩くにつれてだんだん頭に血が上ってきた。
このマークを付けた人間はいったい山を何だと思ってるのだろう。
何の目的でこんな事したのだろう。
せっかくいい尾根が台無しじゃないか。
ほんとうにもう嫌になるくらいマークされていて
最後はわざと登山道を外し遠回りになる事は分かっていたが別の尾根を下った。
その尾根はすぐに植林になり大分上部で国道に出てしまった。
時間的にもかなり回り道になった。
しかしそれでもあのピンクマークと付き合うよりはよっぽどましだった。
一体あのピンクマークは何なんだ!
楽しかったはずの山行が最後にケチをつけられた。