車止めから奥もきれいな舗装路が続く。
遊歩道にかかる吊り橋を右に左に渡って沢を進む。
銚子滝につくと流石に身が引き締まる。
難しい登攀が続く。ロープで確保してもらって進む。
緊張の登攀が続いた後はのどかな日本庭園を思わせる沢が迎えてくれる。
再び沢が狭まると両側のたった暗い滝が現れ右手側のバンドを渡る。
昨秋はこの上を高巻きした。今回は沢を進む。大滝が迎えてくれた。
緊張の沢が続いた後はのどかな川原で昼休憩してホッと一息。
泳がないと越せそうにない淵は右岸側を最短で巻いた。
僕には登れそうに思えなかった滝もSさんにかかると「楽勝」
大平は滝上で劇的な変化を見せる。何時来てもその変化に目を見張る。
白いブナが天に向かってすっくと立つのが印象的な場所でテン泊。
朝の大平の樹林帯は清楚な空気が流れて生き返るようだ。
三角点でしばらく休憩。西の屏風山はガスっていた。
大平を下っていく。滝はトラバースして草付きを下った。
銚子洞の下りは難しい場面も多かったがSさんにリードされて何とか下る。
最後はエスケープルートから巻いたがこれが結構大変だった。懸垂下降をして滝を下った方が楽だったかも。
9月5日(土)
「マッターホルンより難しい」
今夏、スイスの峰々を登ってきたKさんにそう言わしめたのは奥美濃の秀渓、銚子洞。
今回はOSKのSさん、Kさんという大先輩のお供をしてこの秀渓を遡行する事となった。
両氏の足を引っ張る事なければ良いのだが。
このOSKの銚子洞沢泊遡行は毎年のように企画されていてぜひ参加したいと思っていたがここ数年は雨や台風に見回れ中止が続いていた。
しかし今年に限ってはその心配は皆無のようだ。
川浦林道は随分手前で車止めがしてある。
昨秋そばつると遡行した時と同様にそこに車を停め出発。
林道はきれいに舗装されていて車で入れないのがもったいないくらいだ。
長い長い林道を歩いて沢に石門が見えるのとそこからはトンネルを通る。
結構長いトンネルで出口の明かりがなければちょっと怖い。
トンネルを抜けたところの舗装された広場に場違いなきれいな建物が立っている。
休憩所のようでトイレも設置されているのだが使えない。
一体何の為に立てたのやら。
ここからは遊歩道となり、いくつか吊り橋を右へ左へ渡ってのんびりムードで沢を進む。
やがて銚子滝に着くと雰囲気は一変。
遥か頭上から轟音を立てて落ちてくる滝に身が引き締まる。
滝のすぐ右側の草付きの急斜面を佐竹さんが先頭で登り確保されたザイルで僕、久世さんと続く。
昨秋はここをフリーで登ったがやはりザイルがあると安心感がある。
時間的にも速く登れたような感じがした。
銚子滝の上は赤岩の滑床ですぐに大きな淵をともなった12m滝が壁となって現れる。
ここも滝の右側をザイルで確保してもらって登る。
広い出合に出ると雰囲気ががらりと変わりのどかな日本庭園を思わせるような沢となる。
大滝2連チャン越えでかなり緊張したがここにくるとホッとする。
許されるならここでのんびりしたいくらいだ。
再び沢が狭くなってくると淵を持った滝が現れる。
そこを左から巻いてしばらくすると8m程の滝。両脇に岩が立って暗い滝だ。
ここは左岸側のバンドを伝って越えていく。
滝を越えると泳がないと越せそうにない淵。
ここは右手の岩壁を空身で登ってザックを引き上げた。
昨秋はここから左岸の山腹を巻いて次の出合までいったがSさんはその先のバンドを伝って沢伝いに進んでいく。
ヒヤヒヤしながら後に続いていくと意外とあっさりと出合に出た。
昨秋は出合から先も越せそうにない淵や滝が続きそうでそれを嫌って左岸の小尾根から高巻きした。
しかしそれはなんだか沢を歩いている雰囲気じゃなかった。
今回はSさんのリードで沢を進んでいく。
すると右に曲がったところに12~13mの大滝が現れた。
ここは右手の岩場にホールド、スタンスがあり登りやすそうだが高度感がありSさんにリードしてもらって確保してもらう。
滝を過ぎたところに昨秋、小尾根から見下ろした細長く深い淵が現れた。
上から見た時はとても越せそうに見えず高巻いて正解だったと思ったが実際に来てみると左手を簡単に渡れてなんでもなかった。
大きな丸い淵はちょっと越すのにてこずった。
へつり気味に行こうとしてSさんがどぼん。
続いて挑戦した僕もどぼん。
笑いが起こる。結局ちょっと高めのところを木を掴んでトラバースして越えた。
すぐに6~7m程の滝が現れた。
滝の右側を登れそうだがその前に淵がある。
「H君、深さを見てくれ」と言われて淵に入ってみると胸ぐらいの深さだったが距離が短く簡単に渡れてた。
そのまま滝の右側の岩場に取り付いて登っていった。
上部がちょっと嫌らしい感じだったがなんとか登って二人を待つ。
今回唯一トップで登った滝だった。
そこからはしばらく巨岩帯が続く。
ここもかなりハードでザックをおろして登る場面や岩場の微妙な幅の飛び越えなどもありスリル満天。
昨秋休憩した出合を過ぎて沢が穏やかになったところで昼休憩。
流石に沢泊のザックは重く荷を降ろすと翼が生えたように身体が軽くなる。
休憩地から少し進むと越せそうにない淵が現れる。
昨秋はここをかなりの高さで高巻きした。
Sさんも以前来た時に大高巻きをしたそうだ。
で今回はもっと低いところを行けるのではないかと探りながら進んでいく。
Sさんのルートの見極めで岩場をトラバースし最短のルートで巻く事ができた。
時間も体力もかなり節約できた感じだ。
ここから大平の出合まではゴーロの沢を歩いてわずか。
身覚える滝の前に出ると銚子洞を登り終えた充実感が全身を包む。
取り付きから大平の出合まではどうやら最短の道のりで辿り着けたようだ。
以前ここに来た時は随分と回り道をしておりその時とはまるで違う沢に来たような感じだ。
出合から大平の沢に入りしばらく続くゴーロの沢を進む。
左右に巨木の樹林が現れて少し沢が穏やかになったかと思うと6m程の滝の2連チャン。
ここを訪れるのは今回で三回目。
過去の二回は何れも左岸側のバンドまであがってトラバースした。
しかしSさんは楽勝で直登できるという。
見ているとうまく登って上段に着いた。
Kさんもそれに続いた。
僕も挑戦。
最初のトラバース気味の取り付きが嫌らしく少しスリップもしたが何とか登れた。
2つ目の滝は右から簡単に巻いて上部の沢に出る。
ここから沢はそれまでと姿を一変させてすばらしい樹林帯の中を流れていく穏やかな流れとなる。
紅葉の頃にくれば目を見張るようなすばらしい風景を見せてくれるところだ。
今回は時期が早いがそれでもこの展開は素敵だ。
穏やかな流れと樹林に癒されながら進んでいく。
流石に重い荷物を担いでの遡行で3人ともへばって足取りは重い。
沢の狭くなったところを過ぎて右岸側の稜線が低くなってきたところで今日のテン泊地にする事にした。本当はもう少し先が樹林帯としてはいいのだがもう身体が先に進む事を許さない。
左岸の高台になったところの低い木を刈ってテントを設営。
対岸に真っ白なブナがすっくと天に向かって立っているのが印象的な場所だ。
流れの横の狭い地に枯れ木を集めて焚火を起こし豪華ディナー。
アルコールも入っての楽しいひと時は時間の経過を忘れさせ気付けば時計は10時を回っていた。
9月6日(日)
蚊が少しうるさかったが思ったよりも暖かくぐっすり眠れた。
5時に起きる予定だったが起きだした時はもう6時だった。
7時過ぎにほぼ空荷でテン泊地を出発。
左門岳に向かった。
大平の源流部はすばらしい樹林帯が広がる。
ブナやミズナラの巨木の中に流れる早朝の清楚な空気が疲れた身体に染み渡り生き返るようだ。
いつまでも続きそうな樹林の中を沢は幾つにも枝分かれしている。
沢の詰めではこの枝沢を見極めるのが難しい。
今回も一ヶ所間違えて左門岳直登を逃し東側の稜線に出た。
多分とっちゃん達と沢ノ又からの周遊で出たのと同じところだ。
しかしここは薮が少なく登りやすくてよかったのかもしれない。
左門岳山頂でしばしの休憩。
西側の切り開きから見える屏風山はガスに煙っていた。
下りは登りと同じルートを辿ってテン泊地まで戻りテントを回収。
そのまま大平の沢を下っていく。
銚子洞の下りも登りとほぼ同じルートを下った。
登りで渡れなかった淵の一つはザックを浮き袋にして泳いだ。
びしょ濡れになったにもかかわらずみんな笑顔だった。
しかし水を吸ったザックは5割増ぐらいの重さでずっしりと肩に食い込む。
思ったより高度感のあった滝は途中50mと40mのザイルをつないで懸垂。
荷が重いだけに下るのが大変だ。
最後は庭園のような出合を越えたところの左岸側尾根に取り付いてエスケープルートに入り二つの大滝を巻く事になった。
しかしこれとて急登と急下降で簡単な巻きではなかった。
滝を懸垂下降していった方が良かったんじゃないかという泣言もでる。
特に最後は尾根筋を選び間違え30mほどの絶壁を懸垂下降する事になった。
しかしやってみるとこれはなかなか楽しかった。
下についてそう言うとSさんが一言「トップが開拓したからこそ楽しく下れるんだぞ。」
ごもっとも。
今回の沢登りはSさん、Kさんという大先輩が導いてくれたからこそ楽しいものとなった。