スキー場はまだクローズ。低い雲が気になる。
夏道をラッセルしながら進む。積雪はまだまだ少ない。
女人堂脇でテントを設営。風が強くて大変だった。
翌朝は快晴。御嶽山が朝陽に照らされてきれいだった。
夏道を剣ケ峰目指して進む。
上部に至ると時折突風に足を止められる。
山頂稜線上は意外に風が強くなく左右の景色に感嘆の声があがる。
山頂からは富士山ものぞむ事ができた(この写真ではわかりずらいかも)
一の池の斜面を利用して滑落停止訓練。なかなか難しい。
10月5日(土)
昨年に続き二度目の参加となった冬山技術講習会。昨年は濁河から登ったが天候に恵まれず両日とも訓練らしい訓練はできないまま下山した。今回はどうだろうか。
大垣から高速にのってしばらく、フロントガラスをポツポツと打つものが。今年もかと嫌な予感が頭をよぎる。今年は龍神様が参加してないから大丈夫と思ったのに。龍神様は僕に乗り移ったのか。しかし、御岳ロープウェイに着く頃には青空も見えだした。やはり晴れ男だった、と思い直した。勝手なものだ。
御岳ロープウェイスキー場はもうオープン予定日を迎えているはずだが雪が少なくまだ営業していなかった。ロープウェイの乗り場で係員に聞くと人工雪でなんとか来週までにはオープンできそうだとの事。しかし下部のゲレンデはまったく雪がない。オープンしても上の方だけのようだ。
ロープウェイ降り口の飯森駅から上の尾根は例年ならブッシュが雪に隠されて歩行に適している。しかし今年はまだ笹が青々と繁って、これでは歩行は困難と夏道を進む事になった。
寡雪の今シーズンとはいえ登山道にはそれなりの雪がある。ひょっとしたら山スキーでも行けるんじゃないか、そう思える程の雪がある。ただ登山道なので幅が狭く滑るのは難しそうだ。
この登山道の雪を利用して女人堂まで先頭を交替しながらのラッセル訓練を行った。早々と先頭を交替する人、粘り強く皆を引っ張っていく人、それぞれにレベルに合わせた訓練が行われた。
上部に行くと風が出てきて雪も舞いだした。先ほど見えかけていた青空もどこへやら。ただ夏道は溝状になっているので風が当たらずその分歩きやすい。
テン泊予定地の女人堂は風が強い。どこか風の当たらない平らなところを探したが難しい。そこでなるべく風の弱そうなところを選んでテントを2張り張った。テントの張り方の講習を交えてなので結構時間がかかった。
この日予定されていた歩行訓練などは天候が荒れ気味なので中止となった。早々とテントに潜り込みチョビチョビとやりだした。こんな時間からじゃアルコールがもたないな。荷物を軽くしようと今回は控えめにしたアルコールだったがこんなだったらもっと担ぎ上げれば良かった。
夕方になって全員が大きい方のテントに集まり鍋を囲んで宴が始まった。山の四方山話に花が咲く。K2登山隊に参加したという方もみえて興味深い話を聞かせてもらった。
長いようであっという間だった楽しい宴も終わりを告げようとしていた頃、外に出ていたリーダーから「星が見える、明日は行けるぞ」という力強い言葉。その頃には風も弱まり明日の好天に期待を寄せてシュラフに潜り込んだ。
10月6日(日)
二日目は快晴の朝を迎えた。頭上に聳える御嶽山が朝陽に輝いて神々しい。昨晩のリーダーの言葉通りでこれはなんとか山頂まで行けそうな雰囲気。ゆっくりと準備を整え頂を目指して出発した。
雪は昨日から夜半にかけて降ったものが積もり結構深い。ラッセルが大変な感じだ。そのラッセルは訓練を兼て交替で行っていった。女性陣が思いの外強いのでビックリした。
上部では雪がクラスト気味になって固くなっているので歩きやすい。ピッチも上がる。
尾根上に出ると頬に当たる風が強い。時折吹く突風に身体が持っていかれそうだ。見上げれば稜線には雪煙が舞っている。その様子に不安の声がもれるがリーダーの「大丈夫」の声に励まされて前進。
黒岩のあたりでアイゼン歩行に切り替える。覚明堂までの急斜面の登高ではサブリーダーから「慎重に!」の声がかかり気を引き締めて進んだ。スキーで登ると結構怖い斜面だ。
覚明堂から上の稜線は心配したほど風が強くなく歩行にはさほど影響しなかった。それよりも両手に広がる風景のすばらしさに歓声があがった。
時折舞い上がる雪煙をくぐって山頂に到着。三角点を囲んで万歳三唱の後ゆっくりと風景を楽しむ。あいにく白山や朝方、白い山肌を見せていた乗鞍岳は雲に隠されて見えないが東側に広がる中央アルプスを中心とした大パノラマは息をのむ程美しい。そして驚く事に山並みの向こうには富士山がその頂を白く輝かせていた。御嶽山ももう何度か登っているが富士山を見た記憶はない。この思いもしなかった贈り物に全員大感激。この一事だけでも今日の山行は忘れられないものとなった。
景色を楽しんだ後は一ノ池の斜面を利用して滑落停止訓練とアイゼン歩行訓練を行った。僕自身は滑落停止訓練を受けるのは初めてだ。やってみると思ったより難しい。慣れていないといざという時にはできないだろう。いい経験ができた。
雪山の下山は速い。リズミカルに雪を踏みしめながら楽しく下っていく。そんな中でもサブリーダーから「慎重に!」という声がかかる。
気の緩んだ時にこそ事故は起こるもの。だからサブリーダーは「慎重に!」という声をかけられたのだろう。「慎重に!」という言葉は山をやる時にはいつも胸に刻んでおきたい言葉だ。
時折スキーができそうな斜面が現れる。やりたいなあと思うがここまであがるのが大変そうだ。雪の少ないところを下りるのも。
雪に下部を埋められたテントの撤収は思いの外苦労した。雪に埋めたペグを掘り返すのに一苦労。ここが本日の核心部だ、といいながら固い雪を掘り返した。とはいえ、好条件下での訓練山行を終えた顔にはどれも笑みがこぼれていた。