釜トンネルを抜けると正面に焼岳のゴツゴツとした山容が見えた。
更に進むと進行方向に穂高連峰。真っ白に雪化粧して神々しかった。
下堀沢を見上げると両岸が崖で荒々しい。
下堀沢の右岸尾根を登る。取り付きからしばらくはかなりの急登。
急登を終えると穏やかな樹林帯が続く。
左手には乗鞍の峰々が見えてくる。何時も見る乗鞍と違った雰囲気。
右手に焼岳のボールが見えてくる。地形図で想像していたよりスケールが大きい。
ボールの右岸側をトラバース気味に上っていく。
南尾根の稜線を目指す。吹き下ろす風が強い。
鞍部に着いたところで下山する事に。広大斜面にドロップ。
ちょっと重めの雪質だが気持ちよく滑り降りる。
皆でテーブルを作って休憩。
休憩後は樹林の尾根を滑り降りていく。
2時頃には橋の他ものと党略。相変わらず穂高が神々しかった。
前日仕事を終えて平湯に直行。予定より早い10時頃に安房トンネル入り口に着いて車の中で一人宴会。12時頃シュラフにくるまる。
暗いうちに起きだして準備をしているとkyuさん達が到着した。車を平湯のバスターミナルまで移動してそこでタクシーを拾い釜トンネルに向かう。
釜トンネルで準備していると単独のボーダーの方とkyuさん、N軍曹が親しげに話しだした。どうやら2年程前に山で出会った人らしい。話が弾んで結局ご一緒する事となった。総勢7人のパーティになった。
釜トンネル内はこれといった照明もなく暗い。時折、出口までの距離を示す行灯がありそれが数少ない明かりだ。
1100mそこそこのトンネルだが歩くと長く感じる。やっと出口の明かりが見えた時はやっと解放されるかとホッとした。
トンネルを抜けると正面に焼岳の山頂付近が望めた。岩でゴツゴツとした山肌が迫力だ。
凍てた道路を足下に気をつけながらしばらく歩いていくと進行方向に穂高が見えてきた。朝陽に照らされた山肌は真っ白に輝いていて神々しかった。その景色にクワ兄さんが「次の年賀状は決まりだな」と呟いていた。
地形が少し広くなったところに橋が架かっておりそのたもとでシール歩行の準備をする。橋を渡って左手の樹林帯に入ると林道跡らしきものがありそこにトレースがあった。それを辿っていくと下堀沢の左岸に到着。そこから見上げる下堀沢は両岸が崖になっていて恐ろしいばかりだ。
沢を横切って対岸の尾根に取り付く。トレースがあるのでそれを辿っていくが徐々に急斜面になりターンをするのも難しいくらいになる。もっと手前側の斜面を登れば斜度も緩そうな感じだったのだがトレースを利用させてもらっているのだから文句はいえない。
まだ山スキーをはじめたばかりのイマちゃんが遅れ気味になったがどうにか全員急斜面を登りきり一息。大変だったに違いないが明るく振る舞うイマちゃんにこちらが元気づけられた。
後は穏やかな尾根の樹林帯が続く。白い斜面に樹林の陰が描く縞模様が美しい。
しばらくトップを歩かせていただく。みんなで一息ついているうちに追い越していった単独のボーダーもパスするとその先はトレースもない無垢の雪景色となった。こういったところを歩いていくのは実に楽しい。これだけで今日ここにきた甲斐があったというものだ。
1961mの標高点辺りを過ぎると右手に焼岳の大ボールが見えてくる。地形図で見て想像していたよりもずっと幅が広くて一律な大斜面だ。雪質が良ければ気持ちよく滑れそうな斜面だ。
見るとボールの右岸側をトラバース気味に登っていくパーティがあった。恐らくの中ノ湯から登ってきたのだろう。あそこまで行けば再びトレースを利用させてもらって少しは楽ができそうだ。
左手を見ると乗鞍の峰々が見える。こちら側から見ると乗鞍は広大な台地といった感じで何時もと雰囲気が違って見える。
穂高も見えてしばらくボーッと見入っているとkyuさんに「何考え事してるの?」て聞かれた。「ただ見てただけだよ。行った事ないからどこがどこだかわからないけど」と答えると「北アルプスきた事ないの?」って不思議そうに見られた。「うん、自分の山じゃないからね。俺って結構限定された登山者だから。」実際そう思う。奥美濃や鈴鹿は自分の山だなあと思えるけどこの辺りはこうやって誘いでもない限りなかなか来ないだろう。地域限定型の登山者なのだ。山スキーを始めてからその地域は若干拡大しつつはあるが。
日差しのため雪が湿ってシールに団子がつきはじめた。こうなると重くて進むのが辛くなる。あわててシールワックスを塗って最悪の状態だけは避ける事ができたが出発前に塗っておくべきだった。
夏道沿いに尾根を進んでいよいよボール脇のトレースを登る。と、その前にちょっと休憩。みなさんかなりバテている様子。でも後少し頑張ろう。
ボール脇のトレースはあるようなないような感じ。結構な急斜面のトラバースとなりイマちゃんがついてこられるのか心配になる。
一登りして小尾根の取り付きに出る。ここで後続の到着するのを待つ。傍らでは先行していたスキーヤー二人が弱層テストを試みている。はじめて見るので興味があったが稜線から吹き下ろす風が強くて見学どころではなかった。かなりモチベーションが下がる。
なんとか全員あがったところでどこに向かうか検討。結局南峰へ向かおうという事になった。そちらには先行パーティのトレースがついている。
小尾根に沿って登っていって焼岳南峰から下ってきている尾根の鞍部に出る。ここも結構な風が吹いている。ここから南峰までは強風の中かなりの急斜面を登っていかなくてはならない。なんだか乗り気しないなあと思っているともうここから下りようかという話になった。
シールを外して滑降の準備。山スキーではあまり使ってないザックで来ていたため準備にもたついていると皆さっさと滑り降りていく。結局最後にドロップした。
雪質はちょっと重めだが広い斜面で気持ちよく滑り降りてゆける。みんなそれぞれに上手い。特にN軍曹の滑りは何時見ても惚れ惚れする。ボードの高山くんも「下手ですから」という割にすごい勢いで滑降していく。ようし、こっちも負けないぞ!と滑り出すと板が雪に引っかかり転倒。グキ!右膝が…、やばいと思ったがなんとか立てたし滑る事ができた。ちょっと痛みがあるがホ!
下りは登りの尾根の隣の尾根、下堀沢左岸側の尾根を下る事にした。地形図を見る限りこちらの方が下りやすそうだし、こちら側からボーダーのパーティが登ってくるのが見えたので行けるだろうの判断。結局その判断は正解だった。
尾根の上部は広々とした雪原になっている。そこで休憩をとる事にした。テーブルを作って食料を広げる。いろんなものの持ち寄りでいつもながら賑やかなランチとなった。
休憩地より下の尾根は樹林帯となり徐々に急斜面となる。雪質も徐々に重くなっていきターンが難しくなってくる。女性陣からは「キャー、ワー」と悲鳴とも雄叫びともわからない声があがる。
途中、単独のボーダーが下りてきた。その人はボードにストックというスタイルだ。そのスタイルでこの重雪の樹林の中をシャッシャと颯爽と滑り降りていく。その姿に思わず格好いい!と言っていた。あんな感じで滑れたらいいだろうなあ。
尾根の下部の急斜面でちょっと時間がかかったが14時頃には橋のたもとに着いた。青空の下の穂高は相変わらず神々しいが朝方より若干黒くなったようだった。今日も一日楽しい思いができた。