荒れた椀戸谷林道を出発。
沢はこのところの雨の為水量が多め。
新緑に囲まれた沢は特に難場もなく快適に進んでいける。
ガレの急斜面を終えると一瞬穏やかな表情となる。
平は薮に覆われていたが難渋する程ではなかった。
鞍部に出ると樹間から不動山が見えた。
稜線の薮を漕いでいくと前方に烏帽子山のピークが現れた。後少し。
ヤブに埋もれるようにひっそりと三角点があった。
最近は無雪期の登頂をあまり聞かなくなった揖斐の烏帽子山に行ってきた。
まだ登頂した事がなく以前から行きたいと思っていた山ではあったが行く時は残雪期だろうと思っていた。実際、数年前に残雪期に挑戦している。しかしその時は雪の状態の悪さにどうにも気分が乗らず烏帽子山のピークを前にして引き返した。それ以来何時行こうかと機会を狙っていた。それがまさか無雪期の登頂になるとは思わなかった。
元々の計画では金草山へ行く事になっていた。しかし金草山は土砂崩れで通行止めとなっており岐阜県側からはアプローチできない。そこで目的地が烏帽子山となった。日取りは23日だったのだがその日は雨で中止。で順延となって今回の山行となった。故に参加者は当初より少なめ。それでも8名の精鋭ぞろいのパーティとなった。
椀戸谷林道は少し入ったところで荒れはじめていたので早々に車を停め歩く事にした。入渓地までは25分の林道歩きとなった。
左岸から右岸に渡る橋の袂から沢へと下りる。沢はここのところの雨の所為だろうか水量が多い。水流の脇を石を拾いながら遡行していく。
トップを歩かせてもらったが後続の事を考えると何時ものように流芯ばかりを歩いてもいられない。歩きやすいルートを選んで進んでいく。そのため何時もよりゆったりペースだ。
沢には滝は全くと言っていい程なかった。唯一目を楽しませてくれた滝らしい滝は最初の二俣の左俣にあったがそちらは今回のルートではなく登る事はなかった。4m程の滝で簡単に巻けるが直登が面白そうだった。
沢ぐるみをはじめ様々な樹木が若葉をみずみずしく輝かせて沢を優しく彩る。そこからのぞく空は初夏の色。虫が増えたりヒルが出たりと何かとこの季節の沢は敬遠されがちだが僕はこの季節の沢の色がとても好きだ。命の育みを感じる色だ。
水流が途絶えると沢はガレの急斜面となる。沢靴では歩きにくい。メンバーには持ってきた下山用の靴に履き替えてもらった。僕は何時ものようにスパイク地下足袋。珍しがられた。
ガレ場を詰めていくと一瞬登山道のような沢が現れ気持ち良くそこを越えると平に出た。計画段階ではこの平がヤブで覆われていて大変だろうと思っていたが実際に立ってみると思っていた程のヤブではない。全体を覆う笹もまだねている状態。これは意外に歩きやすいかもしれない。
稜線に向かって平を歩いていく。ところどころ濃いヤブもあるが進むのに難渋するようなところはなかった。やがて斜度が増してくると笹が全面を覆うようになる。その中を笹の弱そうなところを選んで進んで行く。最終的には沢筋に出る。沢筋は笹も薄くまるで登山道のような感じ。そこを詰めていくと目指していた稜線鞍部に出た。
流石に急斜面のヤブコギとなった為隊列が伸びた。後続を待ちながら休憩をとる。鞍部から北に見える山はまだ未踏の不動山のようだ。
全員がそろったところで稜線を東に向かって進む。歩きはじめはヤブが薄く歩きやすいかと思ったが徐々に笹が濃くなってきた。それでもまだねている笹が多く助かった。
烏帽子山手前のピークは南東に伸びる尾根のジャンクションとなっている。実はこの南東に伸びる尾根を歩いて登頂するという計画もあったのだが見るからにヤブコギが大変そうだ。
鞍部を越えていよいよ烏帽子山への最後の登りとなる。ここも笹が濃い。なんとか笹の弱いところを選びながら進んでいくが後続が遅れ気味だ。後続を待っては進んでいく。途中、獣の匂いが強くなって警戒した。ふと足下を見ると熊のものだろうかまだ新しい大きな糞があった。
斜度が次第に緩くなってその先は登りがない高みに出た。やっと山頂稜線のようだ。しかし三角点はまだ見当たらない。ふと右手を見るとそれらしき藪原がある。そちらに向かっていって探しすとヤブの下にひっそりと三角点が眠っていた。
後続を待つ間、先着メンバーで8人が休憩できるだけのスペースをヤブを刈って作る。回りをヤブに囲まれた風情は実に奥美濃らしくていい感じだ。
やがて遅れていた後続も到着し、この山を登ってB級の山(OSKではA級、B級と山を格付けしている。その制覇を目指して登っている人が多い)は不動山だけとなったというO
さんの音頭で万歳三唱。その後楽しいランチタイムを過ごした。
下山は往路を忠実に辿っていった。笹薮だったが所々に付けていった目印が効いて意外とすんなりと下る事ができた。