岩ノ子谷林道車止め付近から上流を見る。空は曇天。
林道の最深部から沢に下りる。水量は多めだ。
東水谷の出合からしばらくは細い沢が続く。深々とした淵が印象的。
自然林に囲まれた穏やかな流れ。まったく手つかずの自然があふれていた。
広々とした樹林が広がる出合。ほっと一息入れた。
沢の両岸には栃の大木が多い。どれも立派だ。
東水谷上部では滝が連続。水量が少なければ問題なさそうだが今回はちょっと難しかった。
稜線までの詰めは草に覆われているものの比較的登りやすかった。
ムクロ谷源頭部も原生林の雰囲気。こちらも栃の大木が目につく。
広々とした出合で休憩。ここでGPSを落とした事に気づいた。
休憩地よりわずか下には幅広な大滝があった。今回一番の滝だ。
中水谷では2回淵を泳いだ。巻くのは時間がかかりそう。
金曜日が休みになった。
天気予報を見ると土日は雨。
金曜日は何とか持ちそうだ。
これはラッキー!
前から行きたかったムクロ谷に向かう事にした。
大垣を朝早く立つ予定だったがアラームのセットを間違え起きたのが5時。
あわてて準備をして家を出た。
途中買い物をして岩ノ子谷林道の車止めに着いたのは8時少し前。
本当はここを6時頃出発したかったのだがしょうがない。
しばらく林道をとぼとぼと歩く。
林道終点が近づくと左手に「岩ノ子ブナ植物群落保護林」を示したパネルがある。
福井県境あたりにブナの群生地があり昨秋はそれを見て圧倒された。
今日のムクロ谷はどんな樹林が待っている事だろう。
パネルを過ぎると林道は草に覆われて廃道に近くなる。
その中をわずかな踏み後が続き沢まで導いてくれる。
昨秋はここに自動のカメラが仕掛けてありそのフラッシュにビックリした。
それは取り外されたようだ。
何らかの調査が終わったという事か。
沢はここのところの雨続きで水量が多いようだ。
そこを右に左に渡りながら進んで行くと中水谷と東水谷の出合に出る。
山日和さんの話では登りに東水谷を使ってムクロ谷を下るのがいいらしい。
でそれに従って右手の東水谷へ進んで行く。
沢は両側が切り立って狭くすぐに深い淵が現れる。
しかしここは左側から簡単に越せる。
その後も狭い沢が続くが難しいところは特にない。
しばらくすると沢が若干開けてくる。
左右の山腹は自然林の緑であふれている。
左右の枝沢にかかる滝は水量が多く緑の中のいいアクセントになっている。
左から比較的大きな沢が下りてきている出合は広々としていて雰囲気がいい。
ここで初めての休憩をとる。
出合から少し行くと左岸側に栃の大木が立っていた。
この沢は左右の山腹に栃の巨木が多く見受けられるがその中でも大きい方ではないだろうか。
沢が狭くなってしばらく進むと左右の水量がほぼ均等な二俣に出る。
ここを右手に進んで行くと4〜6mぐらいの滝が幾つか現れる。
水量が少なければ何れも登り頃な感じだが今日はちょっと難しい。
それでもなんとか登りきった。
ここまでくると周りの樹林は原生林といった雰囲気だ。
全く手つかずの自然がここにはあふれていて圧倒される。
地形図上で三俣にみえるところは実際には二俣でそこを左に入って行くとまた二俣が現れるという風だった。
そこを左の沢へ入って行く。
沢は徐々に斜度をまし草も覆いかぶさってくる。
しかし頭上は開けていて明るい。
息は切れ切れだったが思ったより登るのは難しくない。
稜線が近づいてもヤブはそれほど濃くならなかった。
奥美濃の稜線ゆえ激笹薮が待っているのだろうと思ったがそれもなかった。
笹はあったが誰かの頭みたいにまばらな感じだ。
稜線上の県境を越えて岐阜県側のムクロ谷に向かって下りる。
あれ?県境を越えるのだから福井県側では?
しかしここは岐阜県側から県境を越えて岐阜県側に出るという不思議なところなのだ。
ムクロ谷の源頭部は先ほどまで登っていた沢と比べると広々している。
斜度も緩やかで解放された気分になる。
樹林もブナが混じっていい感じだ。
少し下ると左右に栃の大木が目立つようになる。
ここも東水谷と同じく原生林といった雰囲気だ。
人の手が入った跡は全く見受けられない。
ついでだがこの周辺の山域は送電線も全く走ってない。
草が多いかぶさった沢筋を足下に注意しながら下って行く。
しばらくすると滝が現れ始めるが何れも簡単に巻けた。
沢が開けたところの出合で休憩をとる事にした。
今日の休憩は出合系ばかりだ。
出合でテントを張ったらこれがほんとの出合系サイト。
危ない出会いがあるのかも。
と冗談を言っている場合でない事態がここで発生した。
荷物を降ろしてふと気がついた。
ない!腰に着けていたはずのGPSがない!
これは参った。
これまで山でなくした高額なものの数々が頭に浮かんでは消えた。
高度計付き腕時計、スキーシール、LEDヘッドランプ…
それらにGPSが加わるのか。
しかし今回は購入して一ヶ月も立っていない。
それに安く手に入れたとはいえ5万円近い金額だ。
流石に物に対して執着心の薄い方の僕でもこれはちょっと。
可能性は少ないが探しに行く事にした。
腹ごしらえをして下りてきた沢を空荷で登りだした。
なるべく下りてきた足跡を辿って。
滝を巻いたあたりでヤブがあったのでそこに引っかかってないか注意したがない。
結局源頭部あたりまで登り返したがそこは広々としていてそこで落としたなら見つかる可能性はまずない。
仕方なく意気消沈して再び沢を下り始めた。
すでにGPSのない山行は考えられなくなっている。
下りながら新しいGPSの購入を検討していた。
地図ソフトはあるから本体だけの購入として3万4〜5千円か。
痛い出費だ。
もう少し足せばスキーブーツが買えるじゃないか。
あれこれと考えながら下っている時ふと足下の水たまりを見た。
浅い水たまりの中に黒い物が漂っている。
あ!あった!わあ、やった!見つけた!
まさに奇跡!
拾い上げてケースから出してみるとロストの表示が出ているがしっかり動いている。
危うくムクロ谷でムクロになるところだったがよかった。
神様ありがとう…
GPSの捜索にかなりの時間をとったので休憩地に戻った時は4時に近くなっていた。
夏だとはいえ先を急がねば。
休む間もなくムクロ谷を下って行った。
休憩地から少し下がったところに幅の広い大滝がかかっていた。
落差は8mくらいだろうか。
名前を付けるとしたら「ムクロ滝」か。
懸垂下降をしなければいけないかと思ったがなんとか巻いて下りれた。
下で見るとこの滝の右の沢にも大きな滝がかかっていた。
その後は滝もなく順調に中水谷まで下りる。
途中左岸の崩壊しているところがあった。
何時発生したのかわからないがこういうのに飲み込まれたらと思うとぞっとした。
中水谷は大きな淵が幾つもある。
ほとんどへつったり巻いたりしながら難なく越えられる。
しかし一カ所、ゴルジュになったところがありどうしても越えられそうにない。
昨秋、ここを登ってきているはずだがどうやって越えたのか記憶にない。
巻く事ができないか周辺を探ったが難しそうだ。
で仕方なく泳ぐ事にした。
前に矢問さんからアドバイスしてもらった通りザックを前にして水につかった。
泳ぐのは苦手だがこのスタイルで比較的楽に泳ぎ渡る事ができた。
矢問さんありがとう。
その後も淵は幾つか現れるが難なく越して行く。
最後の東水谷との出合手前に大きな淵があるがここも泳いで渡った。
一度泳いだ後だけに気楽に泳ぐ事ができた。
車止めに着いたのは6時半に近かった。
夏だからまだ明るいが僕にしては随分遅い時間になってしまった。
遅くなると天候が心配だったがなんとか持ってくれた。