旧坂内村役場の裏手にある遊歩道から登りだす。
上部に出ると雑木林の広い尾根で気分よく歩行。
バックには湧谷山が見える。
前方はガスがかかる。まだまだ遠い。
天狗山からの縦走組と出会い持って来た差し入れを渡す。
急登を登り終え黒津への稜線に出る。雪庇がすごい。
黒津山頂は静かだった。
途中で隠れたクラックに落ちる。
斜度が緩やかになると気持ちのいいツリーランとなる。
12日、13日はOSKの冬山縦走。揖斐の天狗山から黒津山の一泊周遊だ。黒津山は一度歩きで登った事があるができればスキーでもう一度登ってみたかった山。仕事の関係で縦走には参加できないが13日に縦走隊を出迎えるというのを口実にして黒津山にスキー山行する事にした。 坂内道の駅に会社から直行して前泊。着いた時は月明かりが射していたが未明に起きると数センチの雪が積もっていた。上でテン泊している縦走隊はどうしている事やら。
準備をしていると同行のKさんが岐阜から到着した。Kさんは山スキーのベテラン。今日は色々勉強させてもらおう。
車を旧坂内村役場に移動して出発。旧庁舎裏にある広瀬城跡への遊歩道に入る。
竹林の中を一登りすると尾根上に出る。雪はついているものの腐った雪が固まった感じでぼこぼこしてスキーでは歩きにくい。スノーシューのトレースがあるがスノーシューでは快適に登れたんだろう。
広瀬城跡までは思っていたより時間がかかった。ここから奥に更に痩せ尾根の登りが続く。下りが大変そうだ。
やがて尾根が広くなり穏やかな樹林帯となる。ちょっと立ち枯れしている樹木が気になるが癒される空間だ。
気持ちのよい樹林帯を抜けると見晴らしのよい稜線に出る。偶然なのか雪雲が晴れて湧谷山の姿が見える。まだスキーでは山頂に達した事のない山だ。
しばらく痩せ尾根が続く。振り返れば湧谷山やら金糞山やら。いい眺めだ。
痩せ尾根の先には急登が待っていた。一度登っているはずだがその時より急に見える。ここをスキーで登る事が可能なのだろうか。
取付きはそれほど問題なかったが登るに従って斜度が増しキックターンもやっとこさの雰囲気。ジグザグを広くとりたいが左右は更に斜度がきつい。限られた範囲でなんとかターンポイントを見つけて登っていく。Kさんはそこは流石にベテラン。こちらがターンにおたおたしているうちにいいラインを見つけて先行していく。
なんとか急登を終えるとブナを主体とした樹林帯になりほっと一息。ここを気持ちよく通り抜けると晴れていれば見晴らしの良さそうな木立の少ない尾根に出る。右手側の雪庇が不気味な感じだ。
再び穏やかなブナ林を進んでいくと970m三角点。気分のいい樹林帯で大休止したくなるがまだまだ先は長い。
三角点よりわずかに進むと樹間からアラクラに続く尾根が見えた。見るからに急な尾根だ。果して登っていけるのだろうか。
三角点から鞍部を越えて登りにかかったところで前方から黄色いヤッケを来た登山者がおりてきた。おお!そばつるではないか!こちらから声をかけると向こうも気付き後続者に二人が来た事を告げている。
思ったより早い出会いだった。僕の見込みでは早くてアラクラだろうと思っていたのだが。話を聞くと雪がしまっていて歩きやすくテン泊も予定していた天狗山から更に一時間進んだところにしたそうだ。この雪の状態だったら一日で周遊できたなあという話も出たそうだ。その通りかもしれない。
当初、縦走隊と出会ったらいっしょに降りようと思っていた。しかし話しているうちに「上まで行ってこやあ」の声に押されて縦走隊と別れて更に上に進む事にした。
すぐに雪壁のような急登になる。雪質も固くて登るのに苦労しそうだ。ここをなんとかラインを探してじわじわと登り切ると木立の少ない稜線。晴れていれば見晴らしがいいのだろうが気まぐれな雪が舞いだした。
更に続く細い尾根を進んでいくと後ろから声がかかった。Kさんがここで待機するとの事だ。先に進めと言っている。先輩を置いて自分だけ進むのは気が咎めたが指示通りに先に進む事にした。
ここから先は急登だが右手の雪庇さえ気をつければそれほど難しいところもない。やがて穏やかなブナ林の中を進んでいくとアラクラに辿り着いた。
アラクラからの眺めはかつて登った時に経験済みだが見えないとなると寂しい。ここから北東に続く広い雪陵をシールのまま下っていき黒津山を目指した。右手の雪庇が随分高い。
黒津山への登りは無木立の急登から始まる。滑落したら嫌だなあと思いつつ左手の樹林帯を交えながら慎重に歩を進めていく。やがて穏やかな樹林帯に出て後は一息。あまり広くはない黒津山山頂に着く。
晴れていれば好展望な山頂。今日もなんとか天狗山が見える。それと登って来た尾根。こうしてみるとやはり長い尾根だ。
風が吹く山頂は長居するには辛い。それにKさんが待っている。パンを二切れ程食べて山頂とはお別れとした。
下り始めるとすぐ携帯が鳴った。Kさんからだ。下で待っていると言う。急ごう。
登り返しがあるのでアラクラまではシール歩行。途中雲の切れ間から蕎麦粒山、小蕎麦粒、五蛇池といった稜線つながりの山々が見えた。いつかこの稜線をつなげる日が来るだろうか。
アラクラからはいよいよ滑降。なのだが狭い尾根に思いっきり滑るという訳にはいかない。慎重に滑り降りていくとKさんの姿が見えるところに出た。ここでアクシデント。危ないかなあと思いつつ雪庇寄りの斜面をおりた。そしたら急に雪面が落ちた。危うく半身を上に出して止まったがそれは雪に隠されたクラックだった。
雪庇の付け根が割れてできたクラックのようで半身は出ているが足下は宙ぶらりんで這い上がろうにも踏ん張れない。それでもなんとかしようと思ったが右のスキー板が雪に引っかかって抜けない。で手でビンディングを慎重に解除し板をはずしてなんとか脱出。やれやれ。こういうこともあるから雪庇には気をつけないといけない。
Kさんと合流し一緒に下山する。急斜面は横滑りやキックターンを多用してなんとか切り抜けていった。幾つかあった登り返しも無言で向かっていくKさんに引っ張られていく感じでなんとかこなした。途中尾根を間違えて登り返す失敗がありかなり消耗した。しかし緩やかな樹林帯では気持ちのいいツリーランができ今回のスキー山行も報われた感じだった。
尾根が狭くなると雪質もガリガリでぼこぼこになり下るのに苦労する。それでもなんとか広瀬城跡まで降りるとKさんはスキーを担いでいた。それに習って僕も板を担ぐ。しかし遊歩道の腐った雪を壷足でおりるのは足を取られて時間がかかり再び板を履いた。楽しく滑り降りるわけにはいかないが壷足でおりるよりはよっぽど楽だ。
やがて竹林を抜けて旧庁舎裏に出る。その時、携帯が鳴った。縦走隊メンバーからのこちらの事を心配してのメールだった。どちらがサポート隊だか…。縦走隊はすでに大垣に着いたとの事。随分早い。こちらも無事に下山した事を伝えて家路を急いだ。